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大阪地方裁判所 平成4年(わ)538号 判決 1992年11月26日

本籍

大阪府富田林市喜志町三丁目九一八番地の一

住居

同市平町二丁目二一〇四番地の六

不動産仲介業従業員

土井肇

昭和一五年三月一一日生

主文

被告人を懲役一年二か月と罰金一三〇〇万円に処する。

この罰金を全部納めることができないときは、二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、実父土井忠次の代理人として同人所有の不動産を平成二年三月を引渡時として売却譲渡するとともに同人の同年分の所得税確定申告に関与したものであるが、全国自由同和会和歌山県経済商工連合会会長であった坂本肇、同連合会事務局長であった谷口清次、同連合会の事務に関与していた北田叔男、全国自由同和会大阪経済商工連合会事務局長であった松井こと高田良一と共謀して、土井忠次の所得税を免れようと企て、同人の平成二年分の総合課税の総所得金額が三二六万五八七〇円(別紙1の(一)総所得金額計算書参照)、分離短期譲渡所得金額が二九二万五三七五円、分離長期譲渡所得金額が五億四八一万五四八五円であった(別紙1の(二)修正損益計算書参照)のに、虚偽の領収証を作成して架空の譲渡原価を計上するなどの方法により所得の一部を秘匿して、平成三年三月一四日、大阪府富田林市若松町西二丁目一六九七番地の一の所轄富田林税務署において、同税務署長に対し、その総合課税の総所得金額が三二六万五八七〇円、分離短期譲渡所得金額がなく、分離長期譲渡所得金額が六五〇一万三〇〇〇円で、これに対する所得税額が七七九万六〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を経過させた。その結果、平成二年分の正規の所得税額七四四二万四六〇〇円との差額六六六二万八六〇〇円(別紙2税額計算書参照)を免れた。

(証拠)

(注) 括弧内の漢数字は、証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。

1  被告人の

(1)  公判供述

(2)  検察官調書(一六一から一六四)

2  藤田稔(一三〇)、山本辰巳(一三一)、高橋義孝(一三二)、土井忠次(一三三)、楠本一夫(一三八〔二一と同一証拠〕、一三九〔二二と同一証拠〕)、村岡清和(一五〇〔三六と同一証拠〕)、坂本肇(一六七、一七〇)、谷口清次(一七五、一七八)北田叔男(一八一、一八六)、松井こと高田良一(一九一、一九二、一九五)の検察官調書

3  査察官調査書(一二三から一二六)

4  脱税額計算書(一一八)

5  証明書(一一九)

(法令の適用)

1  罰条 刑法六〇条、所得税法二四四条一項、二三八条一項、二項

2  刑種の選択 懲役刑と罰金刑を併科

3  換刑処分 刑法一八条

4  刑の執行猶予 懲役刑について刑法二五条一項

(量刑事情)

本件は、被告人が、実父の不動産売却に関して、かねてから面識のあった同和団体関係者に脱税を依頼して、架空の土地造成費用を計上することにより、六六六二万円余りの所得税を脱税した事案であり、脱税額が高額であるばかりか、正規の税額の約一割程度しか納めないもので、納税義務に著しく違反する大胆な脱税行為である。また、被告人は、犯行前に顧問税理士からおおよその正規の税額を教えてもらっていたにもかかわらず、脱税しようと自ら共犯者高田良一に依頼していることも考慮すれば、犯行態様は悪く、被告人の刑事責任は軽いとはいえない。

他方、被告人は、脱税は依頼したものの、具体的な脱税工作には関与していないこと、同和団体の方に支払った謝礼については、現段階では一部を除いて返還されておらず、被告人の損害の形で残っていること、被告人は、本税、附帯税の一部を納付し、残りも完納すると述べていること、被告人にはこれまで前科前歴がなく、本件について反省していることなど被告人のために酌むべき事情も認められるので、これらの事情を総合考慮して、被告人を主文の懲役刑と罰金刑に処し、懲役刑については、その執行を猶予するのが相当と判断する。

(出席した検察官宮下凖二、弁護人礒川正明)

(裁判長裁判官 田中正人 裁判官 竹田隆 裁判官 平島正道)

別紙1の(一) 総所得金額計算書

<省略>

別紙1の(二) 修正損益計算書

<省略>

別紙2

税額計算書

<省略>

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